About
世の中にはさまざまな病気があり、多くの患者さんがそれらを治療する新薬を待ち望んでいます。どんなに素晴らしい「新薬の候補」が見つかったとしても、すぐに治療に使用できるわけではありません。適切な量や投与の仕方はどのようなものか、副作用はどの程度現れるのかなど、慎重に調べていく必要があります。そんな新薬の候補の有効性(効果)・安全性(副作用)を調べる最終段階の試験が「治験」です。治験は健康な人や患者さんの協力のもとで実施され、治験の結果を厚生労働省に申請し、承認されたものだけが「新薬」として患者さんのもとへ届けられます。
約800件
※2022年度の届出数
約3~7年
2,900件
※2022年度の届出数
治験は国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP:Good Clinical Practice)」という規則に従って実施されます。GCPでは、治験に参加される方の人権を保護し、安全を確保したうえで、「新薬の候補」の有効性や安全性を科学的な方法で正確に調べるためのさまざまなルールが定められています。そのため、治験はGCPで定める要件を満たした医療機関でのみ実施されます。
医療機関に求められる要件はさまざまです。例えば、十分な医療設備を備えていることや医師・看護師・薬剤師など、治験を適正かつ円滑に行うために必要な医療スタッフが揃っていることなどがあります。
医療機関が治験を実施する場合、あらかじめIRBによる審査を受ける必要があります。IRBでは、「治験の計画」が治験に参加される患者さんの人権と福祉を守って「くすりの候補」のもつ効果を科学的に調べられる計画になっているか、治験を行う医療機関や医師が適格か、参加される患者さんに治験の内容を正しく説明するようになっているかなどを審査します。医療機関は治験審査委員会の承認を得てからでなければ治験を開始できません。
※IRB(治験審査委員会)には、医療機関とは利害関係のない人や、医療を専門としない患者さんや市民の立場の方も必ず参加します。IRBは、治験を行う医師や製薬企業から独立した立場で審査を行います。
新しい薬は、多くの人が関わり、厳しい試験や審査が何回も行われたうえで皆さんの手元に届きます。
薬の候補となるタネを見つけ、皆さんの手元に届くまでの流れをご紹介します。
新薬開発の第一歩は、新しい薬の可能性を持った物質(成分)の発見から始まります。自然の素材から抽出したり、化学的に合成したりなどさまざまな手法を用い、基礎研究を積み重ねて「新しい薬の候補」を選定していきます。
次のステップでは、選び抜かれた「新しい薬の候補」の有効性や安全性を、動物や培養細胞を用いた試験を通して期待する効果を発揮できているか、副作用の問題がないかなどを確認していきます。
「新しい薬の候補」は「治験薬」と呼ばれ、人にとって有効で安全なものかどうかを調べるために行われる「臨床試験」のことを「治験」といいます。治験は、第Ⅰ相〜第Ⅲ相までの3つの段階があり、有効性と安全性を確認しながら順に実施していきます。
治験を通して「治験薬」の有効性、安全性、品質、適正な使用方法などを確認したのち、製薬企業は厚生労働省に新薬として製造・販売するための申請を行います。申請後は医薬品医療機器総合機構(PMDA)などによる厳格な審査を受けます。
厚生労働省の承認をもって、ついに「新しい薬」が誕生します。一つの薬ができるまでに3~7年もの歳月を要します。また、新薬として発売された後も調査や試験は続き、より一層安全で使いやすい薬へと改良されていきます。
臨床試験(治験)には3つの段階があり、効果と安全性を確かめながら試験が進められていきます。
少数の健康な成人を対象に、ごく微量の治験薬を投与し、安全性を確認します。また、治験薬がどれくらいの速さで体内に吸収され、どのくらいの時間で、どのように体外へ排せつされるか調べます。
治験薬が目的の疾患や症状を治療できるかどうかを見極める試験になります。少人数の患者さんを対象に行い、治験薬の有効性、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)、用量(最も効果的な投与量)を調べます。
治験の最終段階です。実際の治療に近い形で試験を行うために、多数の患者さんに対して治験薬を投与します。現在使われている標準的な薬やプラセボ(偽薬)と比較して、有効性と安全性を確認します。